独り善がり読書(34)2008年3月 栄西著『喫茶養生記』三千年来の茶の薬効

【茶は養生の仙薬なり。延命の妙薬なり】ではじまる『喫茶養生記』を著した栄西の目に映った当時の日本の医療と養生の光景は、 【昔の人はあえて医療に頼らない方法で病気を治したのに、今の人は健康に対する配慮がいささか欠け、しかも、その医療といえば、…

独り善がり読書(33)2008年3月『喫茶養生記』と『定家明月記私抄』に見る療法の距離

【茶は養生の仙薬なり。延命の妙薬なり。山谷これを生ずれば其の地神霊なり。人倫これを採れば其の人長命なり】 これは、入宋二度の後に日本臨済宗の開祖となった栄西が著した『喫茶養生記』の序の出だしであるが、 【人、一期を保つに命を守るを賢しとなす…

独り善がり読書(32)2006年12月:日経新聞記事の切り抜きで作った究極のクッキングブック

日本経済新聞土曜版のベターホーム協会が掲載しているレシピを切り抜いている内に量が増えたので素材別の見出しをつけてファイルに整理した。 そして、気がついたのは、日常生活で何かと引っ張り出して参考にしてきたのは、カラフルな市販のクッキングブック…

独り善がり読書(31)2006年8月 横溝正史さんの「人形佐七捕物帳」で盛夏を凌ぐ

8月の盛夏期は、横溝正史の「人形佐七捕物帳」を初めとする捕物帳シリーズを読みながら、江戸時代にタップリ浸って凌ぐ事にした。 事の発端は、元禄時代のビジュアルな風俗を知りたくて、「浮世絵」のキーワードで、区立図書館の蔵書検索をしたところ、何故…

独り善がり読書(30)2008年3月 チャンドラーの「ロング・グッドバイ」映画と小説の間

腹を空かせた愛猫に起こされ、眠い目をこすりながら夜明けのスーパーマーケットに餌を買いに行くマーローを冒頭から登場させて、ロマンの香り高い男の友情を描いて世界のチャンドラーファンを痺れさせた「ロング・グッドバイ」を原作とは似て非なる作品に仕…

独り善がり読書(29)2005年9月 映画「読書する女」~初めて知った読書の出前

映画「読書する女」は、フランスの、ミッシェル・ドビル監督の作品で、依頼人の家を訪問して本を読む事を職業にしている女性を描いたもので、1988年にミュウ=ミュウを主演に撮られた。 依頼人のために本を読むといっても、椅子に腰を下ろして依頼人と向…

独り善がり読書(28)2006年8月 メグレ警部「男の首」:モンパルナスの「ラ・クーポール」に渦巻く承認欲求・自己顕示欲

アメリカ式のバー、奥にビアホール、様々な言語が飛び交い、インテリアも客もバーテンもすべてが溶け合って一つの世界をつくり、貴人・ビジネスマン・ボヘミアン絵描き、売春婦などが互いに紹介なしに仲間内のように声をかけ合い、最古参のバーテンのボッブ…

独り善がり読書(27)2006年10月 池波正太郎著「フランス映画旅行」挿入自作絵からメグレ警視を偲ぶ

何かの本で池波正太郎がメグレ警視のファンであるのを知って記憶の隅に残していたのだが、ある時、氏の自作絵画も収納した著書「フランス映画旅行」(文藝春秋社)のページを捲っていると、 生前のジョルジュ・シムノンが頻繁に通った「ジャンの店」を描いた…

独り善がり読書(26)2005年10月 メグレ警視とジャン・ギャバン

定年退職後の楽しみの一つに、好きな作家のミステリー小説を、食事も、風呂も、そっちのけにして、翌日の出勤を気にしないで心行くまで読めることが挙げられる。 ジョルジュ・シムノンのメグレ警視シリーズは30年に亘る付き合いになるが、私はこのシリーズ…

独り善がり読書(25)2007.11.26「ウェブ進化論」梅田望夫著から「21世紀のウェブ隠居」を

「経年劣化」は電化製品だけにあるのではない。私は五十肩になって4ヶ月になるが、これは、立派な人間の経年劣化である。 ある日突然肩に痛みが走り、腕を後ろに曲げるのにえらい難儀をする。てっきり運動不足が原因かとせっせとストレッチを試みたが、症状…

独り善がり読書(24)2007.11.25 映画「砂の器」に見る脚本のオリジナリティ

一昨日と昨日は松本清張の「砂の器」をじっくり読み直したので寝不足・運動不足の二日間になってしまった。 きっかけは雑誌「クロワッサン」での脚本家橋本忍氏の映画「砂の器」に関するコメントだった。あの映画では癩病患者となって街を追われた父と子が物…

独り善がり読書(23)2007.9.1 「人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか」(2)私の理解スケッチ

ベルリンの壁崩壊とIT革命が、資本が軽々と国境を越えるグローバル経済への移行を促進させたのであるが、ここで、私自身の読解力を確認するために、本書から把握した、私なりの「グローバル経済ラフ・シナリオ」を簡単に描いてみた。理解力不足による独断…

独り善がり読書(22)2007.8.27「人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか」(1)本書を読む経緯と読書ノート

(1)本書を読むに至った経緯 私は予てから、グローバル経済の本質について体系的に把握したいと思っていた。何故なら、①企業業績は好況なのに、労働者の賃金は上昇しない、②景気が回復したといわれて久しいのに何時までたっても金利が上がらない、③一億総…

独り善がり読書(21)2007.7.25 中国を多面から読む(2)「ニューズ・ウィーク・アジア版」と「日本経済新聞」から

(1)「ニューズ・ウィーク・アジア版」から このところ、「ニューズ・ウィーク・アジア版」が中国を扱わない週はないのだが、その中から、日本のマスコミからは見えてこない幾つかを紹介。 ① 2007年6月4日号 この記事は、「多くの国が近い将来中国が…

独り善がり読書(20)2007.7.25 中国を多面から読む(1)邱永漢、黄文雄、ジム・ロジャース、春江一也の著作から

経営コンサルティングを生業とする友人の「中国は大きすぎて実態が掴めないからビジネスの対象として考え難い」との言葉を、一方的に臆病者と決め付けるわけには行かなくなってきたようだ。 これまで、中国は、その国土の広大さと人口の巨大さ、経済成長率、…

独り善がり読書(19)2007.7.20「週刊東洋経済」から 所得再配分が後手に廻る中国

中国は私にとって相変わらず関心の的であるが、それも、高い経済成長率といった表面的なものではなく、その高い経済成長率の内側で、一般の人たちはどういう状況に置かれているかについて、知りたい気持ちの方が強い。 で、今回も「女性と仕事の未来館」のラ…

独り善がり読書(18)2007.7.3「週刊東洋経済」から グローバル経済下の新しい常識

恒例の鰻ランチを共にした友人と赤坂駅の乃木坂寄りで別れて、一路田町の「女性と仕事の未来館」ライブラリーへ。 そして、いくつかの雑誌に目を通した中から特に印象に残ったのは「週刊東洋経済」6月2日号の「定説逆転 経済の新常識」からの以下の2点。 …

独り善がり読書(17)2007.6.27 「お金と暮らし」をテーマにした雑誌の走り読み

JR田町駅近くの「女性と仕事の未来館」のライブラリーが気に入って時々通っているのだが、この日は「お金と暮らし」に焦点を当てた「日経ビジネス」、「PRESIDENT」、「クロワッサン」の特集記事だけを走り読みしたので、ここでは、私にとって参考になった…

独り善がり読書(16)2007.6.7 私の情報収集拠点だった「女性と仕事の未来館」

情報収集の場所として一般的に先ず思いつくのは地域の図書館であろう。私の場合徒歩5分圏に充実した区立の図書館があり、他にも徒歩10~15分圏に3館あるので恵まれた環境といえるのだが、最近は時間潰しに来ている人が目立ち、居眠りしている人や、ぼ…

独り善がり読書(15)2007.5.16「THE GIG ISSUE」との初めてであるが良い出会い

緑の多い街路の散策とスタバのコーヒーを満喫した後の、大気に涼やかさを感じる遅い午後のJR国立駅で「THE BIG ISSUE」を売っている60代のホームレスの男性に出会った。 そういえば、何時だったかNHKスペシャルで、自立あるいは自分の住いを持つために「…

独り善がり読書(14)2007.01.01 写真家土門拳を取り上げた日経新聞から~赤貧洗うが如き生活を突き抜けた細菌学者の大らかさ

私の2007年の幕開けは老眼鏡の弦のネジ外れで始まった。はて、面妖な。 実は、2006年暮の29日は友人からの到来物の中古小形テレビのアンテナ設置をするためにドライバーとペンチで腹ばいになりながら作業し、ついで、大晦日は急いで届けさせたアル…

独り善がり読書(13)2006.7.27「覗き」?「恋の橋渡し」?はたまた「誘惑」?

私の井原西鶴探索もどんどん深みにはまって、さらに西鶴の生きた時代の風俗を知りたいものと、近くの区立図書館から「原色日本の美術全30巻」の中から、風俗画に関する浮世絵画集の2巻を、あまりの重さに、足をよろよろさせながら借りてきた。 じっくり眺…

独り善がり読書(12)2006.7.11「ダ・ヴィンチ・コード」ダ・ヴィンチの真意は如何に「最後の晩餐」の解釈

六本木の森アーツセンターギャラリーで「ダ・ヴィンチ・コード展」を見て、いくらか心を残していたのだが、その数日後に近所のbook-offのカウンターで、角川文庫の「ダ・ヴィンチ・コード」ダン・ブラウン著の上・中・下 各巻400円の値札を見て、思わず手に…

独り善がり読書(11)2006.06.18 日経新聞「経済教室」に見る中国の高貯蓄と米中経済摩擦

2006年6月8日付日本経済新聞の「経済教室」が、中国の経常収支黒字の膨張が、米国との経済摩擦を引き起こしているが、その主な要因に中国の家計貯蓄率の高さが挙げられると指摘している。 記事によると、中国の家計貯蓄率(家計貯蓄の可処分所得に占め…

独り善がり読書(10)2006.06.17 アメリカの節約の手引書「66 Ways to Save Money」のアドバイス

アメリカ国民は、先に楽しんで後で支払うというマインドが強いようで、低貯蓄率と借金依存体質が指摘されているが、2006年6月13日の日経新聞朝刊によると、借金依存度が益々深まっているようである。 特に、石油価格の高騰が、日本と異なり車社会で石…

独り善がり読書(9)2006.02.08 アカデミー賞ノミネート監督の本音の議論「News week」より

私が定期購読していた頃のNews weekは、毎年2月頃になると、アカデミー賞にノミネートされた俳優か監督たちを招いて、他の雑誌では見られない本音の議論で読者を楽しませてくれていた。 さて、2006年2月6日号では、その年のアカデミー賞の作品賞と監…

独り善がり読書(8)「News weekアジア版」定期購読事始め

嘗て私は、20年以上に亘って「News weekアジア版」を定期購読していた。そのきっかけは、1985年に導入の男女雇用均等に伴う職系転換試験をパスするためであった。 その試験科目は、一般社会問題、ビジネス問題、そして英語の三科目で、第一回目の転換…

独り善がり読書(7)「ルービン回顧録」~官民の人事交流、日米の違い

2005年11月頃に「ルービン回顧録」を読んだのだが、著者のロバート・ルービン氏は、ウオールストリートのトップ企業ゴールドマン・サックスの共同経営者から、クリントン政権発足に伴い新設された国家経済会議の議長に就任し、その後財務省長官を務め…

独り善がり読書(6)「being digital」and「The End of Work」

ところで、短期間のメンバーであった「Book-of-the-Month-Club」を経由して私が購入した本は、カズオイシグロの小説2冊、ペーパーバック小説数冊、そして「being digital」と「The End of Work」であったが、いずれにしても私の英語力で太刀打ちできるわけ…

独り善がり読書(5)ミケランジェロ還暦後の快挙 「The Sistine Chapel A Glorious Restoration」

「The Sistine Chapel A Glorious Restoration」は前回の「The White House Collection of American Crafts」と同様にBook-of-the-Month-Clubの特典で入手した一冊である。 この美術書は、バチカン美術館と当時のイタリア在住の日本人写真家、岡村崔氏(20…