独り善がり読書(23)2007.9.1 「人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか」(2)私の理解スケッチ

 

 ベルリンの壁崩壊とIT革命が、資本が軽々と国境を越えるグローバル経済への移行を促進させたのであるが、ここで、私自身の読解力を確認するために、本書から把握した、私なりの「グローバル経済ラフ・シナリオ」を簡単に描いてみた。理解力不足による独断はご容赦。

 

1.グローバル経済の現状 先進国とBRICs等との対比

 

 

 

アメリカを除く先進国は、人口減少により購買力は頭打ちで投下資本還元率は期待できず、資本は高いリターンを求めてBRICs等へ向う。

 

②他方、BRICs等には、過小評価された通貨と豊富な低賃金労働を求めて、先進国からの実物資本(生産設備)の投下が進む。

 

2.今後の経済成長 先進国とBRICs等との対比

 

 

①既に近代化(国民国家)を達成した先進諸国では、グローバル経済によって、超国家企業や金融経済の比重が増し、これまで、国家管理で維持してきた国内のバランスが急速に崩壊し、国内の所得・資産格差のの二極化が進行する。

 

②他方、BRICs等は、グローバル経済により中産階級が増大し、国民国家の体制を急速に整えてゆく。国民国家の要は中産階級の拡大であり、中産階級が縮小すれば国民国家は崩壊する。

 

③先進国は次の方向が見えるまでは経済が混沌とするが、BRICs等は、紆余曲折を経ながらも近代化を成し遂げるまで経済成長は続く。

 

3.ポストモダン(脱国民国家)へ移行した先進諸国間の二極化 

 

 

①グローバル経済下では、資本が高い利益率を求めて、軽々と国境を超え、先進国は投下資本率の少ない実物経済よりも、外国貯蓄を引き寄せて資産価格(金融資産や不動産など)の最大化を目指す金融経済の比率が高くなる。

 

②コンピュータ・ネットワークによるグローバリゼーションが、ポストモダン(脱国民

国家)の金融帝国化を促進する。

 

③コンピュータ・ネットワークによるグローバリゼーションは英語の世界言語への収斂をさらに加速する。

 

【私の独白】:英語に弱いばかりか、昨今のパソコン離れが著しい若い携帯(今はスマホ)族の増加が、日本の未来の不安材料になりそうだ。

 

4.金融経済を先取りしたアメリカの金融バランスシート

 

 

①先進国で唯一人口増が進むアメリカでは、国内生産力を超える国内消費力を維持するために、高金利で世界の金融資産をひきつけ、拡大する対外債務(赤字)を強いドルでかわす金融経済を先取りした。図は大雑把な金融資産バランスシート。

 

②よく見ていただければ、借方の対外資産は外国の株式の比率が高く、合併や配当重視を声高く主張して投下資本から最大の利益を得る構成になっており、方や貸方の対外負債の多くはアメリカの債券で、海外のモノを言わぬ温和な債権者の比率が高い。

 

【独白】:国民国家の時代では、アメリカにとって国際収支の赤字を縮小させる事が最

大の課題であったが、現在は、国家単位のバランスではなく、強いドルと高金利政策で、グローバル単位のバランスで成立つ金融経済の仕組みを先取りしている。