独り善がり読書(25)2007.11.26「ウェブ進化論」梅田望夫著から「21世紀のウェブ隠居」を

 「経年劣化」は電化製品だけにあるのではない。私は五十肩になって4ヶ月になるが、これは、立派な人間の経年劣化である。

 

 ある日突然肩に痛みが走り、腕を後ろに曲げるのにえらい難儀をする。てっきり運動不足が原因かとせっせとストレッチを試みたが、症状は益々悪化し、行きつけのクリニックに駆け込むと、外科医は「典型的な五十肩ですな、痛みは必ず引きますよ」と楽観的だった。

 

 しかし、その時期が、半年先か2年先かは個々の患者次第のようで、今は医師の処方に従って治療薬を飲み、入浴後のストレッチを欠かさず、症状が回復するのを待つしかない。

 

 こんな状態だから、首や肩に障るパソコン操作は控えなくてはならないが、足腰の動きや脳の働きが衰えるわけではないので、この時とばかり、せっせと本を読み、友人とのお喋り、古書漁り、さらには国会図書館詣でと、結構活発に過ごしている。

 

 そんな日々の中で出会ったのが梅田望夫著「ウェブ進化論」だ。これはかなり前に話題になった本だそうで、年遅れもいいところだが、シリコンバレーに拠点を置く著者が今後のウェブの世界の展開を分かり易く提示したもので、ウェブ上で「ロングテール」現象なるものが生じている事も初めて知った。時代に取り残されていたのだ、私は。

 

 

 著者はテクノロジーの人なのに、言葉運びが痒いところに手が届くほどていねいで、何よりも表現者の立場から、ウェブ進化の方向をポジティブに捉えているところが気に入り、平野啓一郎氏との対談集「ウェブ人間論」まで一気に読んでしまった。

 

ウェブ人間論」では、当代の人気作家・平野啓一郎表現者として、そして文筆を飯の種とする者として、ウェブの将来を不安と期待を交えて積極的に梅田氏と議論を戦わせているが、彼らの白熱した(字面からも感じられる)語り合いを通して、3年前に定年退職した私は、自分が「定年後の生き方模索中」の身として「ウェブの時代」に遭遇する事の幸運を認識しているところである。

そうだ、「21世紀のウェブ隠居」なるものを展開してみるかと。

 

 で、勢いついでに、次に、梅田望夫氏と脳科学者・茂木健一郎氏との対談集「フューチャリスト宣言」を読み始めたところである。

 

 最近の出版業界は、すぐ役立つハウツー物が氾濫して、これも日本の閉塞状態を物語っているのかと食傷していたが、「フューチャリスト宣言」で、ある面で気宇壮大とも言えるビジョンを語り合う二人の対談に、久し振りに爽快さを感じている。