映画「読書する女」は、フランスの、ミッシェル・ドビル監督の作品で、依頼人の家を訪問して本を読む事を職業にしている女性を描いたもので、1988年にミュウ=ミュウを主演に撮られた。
依頼人のために本を読むといっても、椅子に腰を下ろして依頼人と向い合い、あるいは依頼人の隣に座って表現力豊かに本を読むのではない。
例えば、半身不随の思春期の青年が依頼人であれば、モーパッサンの官能的な小説を読み、さらに、彼から「女の人の、スカートの中はどうなっているの」と質問されれば、彼の目の前で自分のスカートを捲り上げて彼に見せる。
また、依頼人の離婚した中年男が、彼と同じベッドの中で本を読んで欲しいと頼めば、彼とベッドを共にしながら、マルグリッド・デユラスの「愛人」を読むこともやぶさかではない。
こんな調子で100歳の将軍の未亡人、6歳の少女とか、多様な依頼人との読書を介したエピソードが展開されるのだが、ミュウ=ミュウの声が柔らかく、表現力に富んでいるので、声を出して物語を読む魅力を改めて感じさせてくれる。
しかも、ミュウ=ミュウが身に纏う衣装が色鮮やかで、デザインも素晴らしく、それが巴里の街並みに溶け込んで、スクリーン自体が素晴らしい絵にもなっていた。
ともあれ、「読書する女」は、私に初めて読書の出前というものを教えてくれた映画である。
写真は映画プログラムから