2007-12-01から1ヶ月間の記事一覧

矯めつ眇めつ映画プログラム(13)「情婦」

夫が殺人罪に問われ、事もあろうに妖艶な年増の妻が、夫の有罪を証明するために検察側の証人として出廷する。この度肝を抜くマレーネ・デートリッヒの登場から、名優チャールズ・ロートン扮する弁護士と検察との緊迫した法廷劇が息もつかせず展開する。 映画…

矯めつ眇めつ映画プログラム(12)「そして愛に至る」

ジャン=リュック・ゴダールが、彼の長年のパートナーであるアンヌ・マリー・ミエヴィルの監督作品に、一俳優として主演した映画「そして愛に至る」は、中年の知的な夫婦の倦怠感から和解に至る過程を描いている。 プログラムによると、ミエヴィルが仕上げた…

矯めつ眇めつ映画プログラム(11)「ウオール街」

2007年のウオール街の冬はひと際寒さが厳しいようだ。低所得者向け住宅融資のサブプライムローンにからむ巨額の損失で、メリル・リンチや米シティグループのCEOの首が飛び、代表的な金融機関で大量の解雇も予想され、クリスマス商戦も低所得者層のみ…

矯めつ眇めつ映画プログラム(10)ジャン・ギャバンのメグレ警視

定年退職後の楽しみの一つに、好きな作家のミステリー小説を、食事も風呂もそこそこに、翌日の出勤時間を気にしないで心ゆくまで読み耽ることが挙げられる。 特に私は、ジョルジュ・シムノンのメグレ警視シリーズを、30年以上に亘って繰り返し繰り返し読ん…

矯めつ眇めつ映画プログラム(9)「EYES」

セックスとバイオレンスの映像が鮮烈な、ファッション・カメラマンのヘルムート・ニュートンの作品が大好きで、あちこちの展示会にまめに足を運んだものだった。 「EYES]は、ニューヨークを舞台に、華やかなファッション・カメラマンと殺人事件を結びつけた…

矯めつ眇めつ映画プログラム(8)「書かれた顔」

映画「書かれた顔」は、「アメリカの友人」で素人の額縁職人に殺されるプロの殺し屋に扮した、スイスの映画監督ダニエル・シュミットが1995年に撮った作品である。 1982年に初来日して、始めてみる坂東玉三郎の舞台にて強烈な印象を受け、日本の女性…

「矯めつ眇めつ映画プログラム(7)「リスボン物語」

またまた、ヴィム・ヴェンダース監督の作品だが、「リスボン物語」はリスボン市がモチーフの映画を、という同市の依頼に応じて1995年に撮った作品で、リュディガー・フォーグラー扮する映画の録音技師が、手回しカメラでリスボンの街をあちこち撮影する…

「矯めつ眇めつ映画プログラム(6)「アメリカの友人」

私はパトリシア・ハイスミスのミステリーが大好きで、非情で、クールで、洗練された物腰で完全犯罪を成し遂げる悪党の描写が巧みなことに心酔している。 映画「アメリカの友人」は、その、ハイスミスの出世作となった「太陽がいっぱい」の魅力的な悪党、トム…

熊井啓監督の思い出〜高田馬場で見た映画「帝銀事件・死刑囚」

「本覚坊遺文〜千利休」で強い印象を残した映画監督の熊井啓さんが亡くなったのを5月24日の新聞で知った。 私は1970年代の前半に、熊井監督のデビュー作といわれる「帝銀事件・死刑囚」を高田馬場の小さな劇場ACTミニシアターで観たのだが、そこは…

矯めつ眇めつ映画プログラム(5)「本覚坊遺文〜千利休」

押さえた色調の美しい映画であった。そして悔しいことに女性が一人も出ない映画であった。映画「本覚坊遺文〜千利休」は、井上靖の原作を、熊井啓が1989年に監督した作品(ベネチア映画祭監督賞受賞)で、「千利休は何故秀吉の怒りをかい、甘んじて腹を…