何かの本で池波正太郎がメグレ警視のファンであるのを知って記憶の隅に残していたのだが、ある時、氏の自作絵画も収納した著書「フランス映画旅行」(文藝春秋社)のページを捲っていると、
生前のジョルジュ・シムノンが頻繁に通った「ジャンの店」を描いた作品が目に入り、そこで、本当に池波正太郎はメグレ警視、そしてジョルジュ・シムノンのファンだったと確信した。それも生半可なファンではないと。
「フランス映画旅行」表紙
生前のジョルジュ・シムノンが頻繁に通ったジャンの店
そこで、私の何時もの独り善がりの悪い癖が出て、この本に収納された氏の絵画からメグレ警視を偲ばせる作品と、メグレ警視シリーズ作品を結びつける事を試みることに。
先ずは「モンマルトル」描いた作品とモンマルトルが物語の背景をなす「モンマルトルのメグレ」から、
モンマルトル
「モンマルトルのメグレ」と本書に掲載された事件の舞台の地図
次に「サン・マルタン運河」を描いた作品と「サン・マルタン運河」が物語の背景となる「メグレと拳銃」。
サン・マルタン運河
サン・マルタン運河を舞台にした「メグレの拳銃」と本書に掲載された地図
別に物語に付随する挿絵画家が描いたものではなくても、熱心な読者でありファンが描いた事件の舞台に近い風景画と小説で得たイメージを繋げてみると、文字を通してだけよりも、物語の醸す雰囲気がより深く感じられた。
パリ警視庁の写真
ところで、私は1992年にパリ一人旅をした時、メグレ警視の事件に拘わる場所を幾つか散策した。
上記作品のモンマルトルは坂の多い町であり、また、かつては、多くの芸術家のインキュベーターのような役割を果たした当時の雰囲気も味わいたくて、何度も何度も坂を上ったり下ったりした。
また、ノートルダム寺院にも脚を伸ばし、歩き疲れて、ちょっと休憩をと思って寺院のそばの噴水の淵に腰をかけていたところ、目線の先にパリ警視庁が聳えていて、思わず「メグレさんにお会いしたいのですが」と訪問したい気持ちに駆られた。