独り善がり読書(13)2006.7.27「覗き」?「恋の橋渡し」?はたまた「誘惑」?

 私の井原西鶴探索もどんどん深みにはまって、さらに西鶴の生きた時代の風俗を知りたいものと、近くの区立図書館から「原色日本の美術全30巻」の中から、風俗画に関する浮世絵画集の2巻を、あまりの重さに、足をよろよろさせながら借りてきた。

 

 じっくり眺めるのはこれからの楽しみと、先ず、「原色日本の美術 風俗画と浮世絵師」をパラパラめくっていたら、

 

 

艶かしい画風で知られる鈴木春信の作品の中でも、特に艶かしい「かたらい」が目に飛びこんで来た。

縁側で、ちょっと色っぽい年増が、匂い立つ若い男の腕を押さえて、囁きかけている図で、画面からは、ただ事ではない雰囲気が発散している。

 

 

そして、この絵について

「肩を抱き、手首をおさえて少年にささやきかける年かさの女は、障子の影からのぞき見る娘の乳母か侍女というところで、主人と仰ぐ乙女の慕情を代わって届ける恋の仲介者となったものの、なまめかしい年増女の風情を隠し切ることは出来ず、まだ前髪を残す若衆を誘惑しているかのような、あやしいそぶりが窺われる」と、説明している。

 

ところが、この同じ絵が、私が、十年近く手元に置いていた「太陽1995年2月号」に「覗きの悦楽」をテーマにしたページに掲載されている事もあって、

 

 

私には、この絵は、恋の橋渡しの乳母などではなく、前髪の若衆を縁側で積極的に口説いている艶かしい年増と、それを障子の隙間から覗き見して興奮している若い女と映る。

 

うん、どっちに解釈しても、ただならぬ雰囲気が画面から立ち昇るということでは、なかなか、刺激的な絵である。