80歳の追想(9)アメリカ旅行 ⑨ 1979 サンフランシスコ 美しい男達が集まるゲイの街 カストロ通り

 

私と友人はお洒落をして颯爽とバスに乗ってカストロ通りに出かけた。

 

サンフランシスコの中でも高級住宅地として知られるこの地域は、丁度日暮れ時で、柔らかな光と影に包まれた通りでは、多くのカップルが互いの腰に優しく腕を回して歩き、また、洒落たカフェでは熱っぽく互いに見つめ合っていた。そして彼等の誰も私達に目をくれる者はいなかった。

 

「あー、ここには美しい男たちがこんなにいるのに、誰も私たちを見てくれない」と友人と私はため息をついた。

 

それも道理で、ここ、カストロ通りはゲイ・タウンの中心地として世界中からゲイが集まるゲイの聖地であり観光地なのだ。

 

男たちの多くは、手入れの行き届いた髭に、スリムなTシャツ、ジーンズ、ブーツ姿で、スレンダーなスタイルを誇っていた。そんな男たちが求めるのは魅力的な男であって、女ではなかった。

 

1970年代に、サンフランシスコは性的少数者LGBT)の権利運動の中心地となり、カストロ通りはゲイ・タウンとして有名になった。

 

同性愛者の権利擁護活動家として、カストロ通りを拠点としていたハーヴェイ・ミルクがサンフランシスコ市会議員に当選したが、私たちが訪れる1年前の1978年に、市長のジョージ・マスコニーにともに暗殺され、それ以降、ここは同性愛者権利運動の中心となった。

 

さて、あれから45年を経て、カストロ通りの人々は多様性を否定するトランプ政権の出現をどのように受け止めているのであろうか。