矯めつ眇めつ映画プログラム(20)「読書する女」

「読書する女」は、フランスの、ミッシェル・ドビル監督の1988年の作品で、他人の家を訪問して本を読む事を職業にしている女性を描いたもので、1988年にミュウ=ミュウを主演に撮られた。


依頼主のために本を読むといっても、椅子に深く腰を下ろして依頼主と向い合い、あるいは依頼主の隣に座って、表現力豊かに本を朗読するだけではない。


例えば、半身不随の思春期の青年には、モーパッサンの官能的な小説を読むが、さらに、彼から「女の人のスカートの中はどうなっているの」と質問されれば、彼の目の前で自分のスカートを捲り上げて彼に見せてあげる。


また、離婚した中年男が彼と同じベッドの中で本を読んでくれと要求すれば、彼とベッドと共にしながら、マルグリッド・デユラスの「愛人」を読んでやることもやぶさかではない。


こんな調子で百歳の将軍の未亡人、6歳の少女とか、多様な依頼主との読書を通したエピソードが展開されるのだが、ミュウ=ミュウの声が柔らかく、表現力に富んでいる事もあって、声を出して物語を読む魅力を改めて感じさせてくれる。


しかも、ミュウ=ミュウの衣装が色鮮やかで、デザインも素晴らしく、それが巴里の街並みにしっくり溶け込んで、スクリーン自体が素晴らしい絵画にもなっていた。


ともあれ、「読書する女」は、私に始めて読書の出前というものを教えてくれた映画である(写真はプログラムから)。