隠居Journal:大手町ビルの思い出(3)食券で不二家のケーキや小岩井のチーズを持ち帰れた頃

私が大手町ビルで働いていた頃は、ビルの地下2階が地下鉄丸ノ内線乗り場に直結していたこともあって、ビルの1階・地下1階・地下2階は松坂屋デパート、佐々浪ファーマシー、ペコちゃん人形でおなじみの不二家、小岩井パーラー、紀伊國屋書店、喫茶「ルオー」を初めとする多様な飲食店や、理容室などが軒を並べて、さながら商店街の様相を呈して大いに賑わっていた。

 

また、大手町ビル内のいくつかの企業が共同で社員に1枚40円で20枚綴りの食券を福利厚生として供していて、私達はビル地下1階の「オーシャン」という楕円形の大きなカウンターを備えた何でもありのレストランで同僚と食券を使って昼食を摂ることが多かった。

値段は、メンチカツ定食、カツカレー、丼物などの定食は80円、きつねうどん、たぬき蕎麦は一杯40円だったが、定食は結構ボリュームがあって安月給で食欲旺盛な私達には大いに有り難かった。

 

更に食券は不二家と小岩井パーラーでも活用でき、それは食事だけではなく小岩井パーラーではチーズも持ち帰りが出来て、私は幾度か食券でプロセスチーズを持ち帰ってトーストやパスタ料理に活用した。

 

働き始めて時が経ち、私がキーパンチャーの最古参となってまとめ役のスーパーバーザーを務めていたある日、部長がどういう風の吹き回しか、「今日の3時の休憩に、これで不二家のお菓子でも買って、皆で食べたら?」と言いながら1枚40円で20枚綴りのまっさらな食券帖をぽんと私の机に載せた時、「ワーッ」と部屋中で歓声が上がった。