神保町漂游

 「後白河院」についてあれこれ書きまくるという、年来の課題にやっと踏み出したばかりだが、頭の中が煮詰まってきた事もあって、昨日、久しぶりに神保町に足を向けた。

 消費者の引篭りで物がさっぱり売れないと小売業者を嘆かせる不況のこのご時世、さぞかし神保町も人出が少なく、暗い雰囲気に包まれていると思いきや、

老若男女入り混じった結構な人出、店頭に山積みされた安売り本を丹念に選んでいる人たち、店内の書棚をじっくり眺めている人たちの表情がゆったりしていて、なんとも言えないいい雰囲気だった。それに、道を行き交う人々も肩をすぼめて歩いていない。

 私も、老若男女の一員になって、専修大学交差点から駿河台交差点間の書店を、一軒、一軒足を止めて、山積みの安売り本をひっくりかえし、店内の書棚もじっくり観察して、掘り出し物探索に熱が入る。

 で、最後は何時も入る日本古典文学の品揃えが充実している「八木書店」の二階に上がって物色する。梁塵秘抄に関する喉から手が出るほど欲しい本が3冊目に入ったが、値段が7千円台と5千円台、ちょっと、懐が厳しいので、残りの一冊の尾崎左永子著「梁塵秘抄漂游」が2110円なのでこれを買う。早速スタバに入ってページを捲ると、後白河院人間性梁塵秘抄のイメージを膨らませてくれる格好の本である事が判明。


 

 平成6年出版のこの本の定価が2300円、そして古書として私が支払った価格が2110円、著者に敬意を払える安過ぎない価格がいわく云い難い。

 都心の大型書店、近所の書店、そしてbook-offでは絶対に見つけられない本を神保町でなら見つけることができる。私のようにマイナーな領域に関心を持つ本好きにとって神保町はかけがえの無い場所である。

思えば退社時間後に大手町から都電に乗って初めて足を踏み入れて以来、40年に亘って私にとってホッと一息つける「特別の場所」でもある。
 
 有効な税金の使い道があるのにと個人的には反対している「定額給付金」だが、どうやら、支給が決まる見通しだ。支給になったら、1万二千円を持って神保町に向かい、梁塵秘抄鴨長明西鶴に関する本を懐を気にせずに買うか。

私のため、そして神保町の応援のために。

そうそう、安売りの山から小山靖憲著「熊野古道」を買った。200円。私には有り難いが著者には申し訳ない。