独り善がり読書(16)2007.6.7 私の情報収集拠点だった「女性と仕事の未来館」

 

 情報収集の場所として一般的に先ず思いつくのは地域の図書館であろう。私の場合徒歩5分圏に充実した区立の図書館があり、他にも徒歩10~15分圏に3館あるので恵まれた環境といえるのだが、最近は時間潰しに来ている人が目立ち、居眠りしている人や、ぼんやりしている人が多くて甚だ集中力を欠くので、数年前から区立図書館はネットで予約して貸し出し専用として活用している。

 

 とは言え、せめて、「週刊東洋経済」、「日経ビジネス」等の経済週刊誌や「文芸春秋」「小説新潮」等の文芸誌、そして「クロワッサン」等の女性誌に集中してザッと眼を通す場所が欲しいと考えていたところ、海外ツアーで知り合った若い女性から、JR田町駅近くの「女性と仕事の未来館」の話を聞いて、先ずは見学と情報収集の為に足を運んだ。

 

 「女性と仕事の未来館」は、「女性の就業・起業のサポート」を主目的として2000年に国の肝いりで田町駅徒歩2分の好立地に開設された施設で、ホールやセミナー室、ライブラリーなどを備えている。

 

 特にライブラリーは男女誰でも活用可能で、経済・文学・女性をカバーする週・月刊誌はもとより、仕事や起業にかかわる、およそ喰ってゆく為に必要な知識・技術修得に役立つ書籍、家事・健康に関する書籍、さらには、女性作家の文学作品までもカバーする豊富な蔵書が魅力な上に、有り難いことに貸し出しもしている。

 

 また、ライブラリーに隣接する「展示交換サロン」は贅沢なスペースで、仲間内の打ち合わせや学習スペースとしても利用でき、静かで集中できる環境を無料で使えるのは大いにありがたい。

 

 見学を兼ねて足を運んだ時は、「迷った時のネット上の著作権ハンドブック」を借りたが、転職や起業に資するビジネス書籍はITを含めたスキルアップ、法律、マーケティング等、広い範囲に亘っている。

 

 2回目となる昨日は、雑誌類を読むために午後3時過ぎにライブラリーに入ったが、かねてから読みたかった「文芸春秋」誌で、芥川賞作品の「ひとり日和」を読破し、さらに、「週刊東洋経済」最新号のカバーストーリー「単身者1500万人が日本を変える」を一気に読み終えると7時過ぎになっていた。私は高齢化と共に今後日本の主流になりかねない単身世帯の動向に大いなる関心を抱いているので今回の情報収集は非常に有益だった。

 

 また、夕方5時過ぎからは、勤務先や学校を引けた男女が三々五々集り、書籍の探索、レポート書き、雑誌や新聞の閲覧、パソコンでの情報収集など、思い思いの作業を始めていたし、自由スペースとも言える交換サロンでも、打ち合わせやノートを纏める人も増えていた。

 

 机と椅子のバランスがよいのか、3時間位ぶっ続けで本を読んでも一向に疲れないし、目的が明確な利用者ばかりのせいか、それぞれ自分のやるべき事に集中して至って静である。この事は、「情報収集施設」としてはとても大切な環境条件だと改めて思った。

 

 おりしも、「週刊東洋経済」で連載が始まった、真山仁著の小説「ベイジン二〇〇八年」にも眼を通したかったが時間が遅すぎるので次回に廻す事にした。中国にも大いなる関心を抱いている私としては、この連載小説は是非読み通したい。ともあれ、情報収集渡り鳥の私としては、かなりの頻度で「女性と仕事の未来館」通いが始まりそうだ。

 

「女性と仕事の未来館」の1階正面

 

 

1階から2階のエスカレーターを上がったところ

 

 

 

2階の「ライブラリー」と「展示交換サロン」

 

 

独り善がり読書(15)2007.5.16「THE GIG ISSUE」との初めてであるが良い出会い

 緑の多い街路の散策とスタバのコーヒーを満喫した後の、大気に涼やかさを感じる遅い午後のJR国立駅で「THE BIG ISSUE」を売っている60代のホームレスの男性に出会った。

 

 そういえば、何時だったかNHKスペシャルで、自立あるいは自分の住いを持つために「THE GIG ISSUE」を売っている人たちと彼らを支援する人々を報じた番組を思い出した。拳を振り上げた怒りではなく、観る者をしみじみとさせる説得力のある番組だった。

 

 男性に「幾らですか」と声をかけると「200円です」との返事があり、私は200円を支払い、帰路の電車内と自宅での夕食時にじっくりと眼を通した。

 

 

以下は駆け足の記事紹介と私の感想です。細かい字は読み取り難いので、写真のイメージから雰囲気を感じて貰えばと思います。

 

1.巻頭を飾るのは地域雑誌「谷中・根津・千駄木(通称・谷根千)」編集人の森まゆみさんの近況インタビュー。彼女は練達の文章で私を魅了する作家ですが、新たに踏み出した暮らしが私を羨ましがらせます。

 

 

2.派遣と言う働き方を選んだ女性たちに焦点を充てているが、昨今のマスコミのヒステリックな取り上げ方ではなく、グローバルな視野と歴史を統合して、透明度の高い文章で問題点を浮き彫りにしているのが見事。

 

 

 

 

 

 

3.「今月の人」欄はOB販売者が登場する。今回は大阪の京橋駅前で3年間「THE GIG ISSUEの」販売をして、この春から清掃の仕事を得て自立を果たした男性のインタビュー。人生は色々あることを知る。

 

 

4.「THE GIG ISSUE」販売者のホームレスが身の上相談の解答をするユニークな「ホームレス人生相談」。人生のどん底を経験すると透徹した視点を持つのでしようか。

 

 

 

 

 

 

 

独り善がり読書(14)2007.01.01 写真家土門拳を取り上げた日経新聞から~赤貧洗うが如き生活を突き抜けた細菌学者の大らかさ

私の2007年の幕開けは老眼鏡の弦のネジ外れで始まった。はて、面妖な。

 

実は、2006年暮の29日は友人からの到来物の中古小形テレビのアンテナ設置をするためにドライバーとペンチで腹ばいになりながら作業し、ついで、大晦日は急いで届けさせたアルミ製のテレビ置ローテーブルの組立と工事に追われていたのであった。

 

 しかるに、元旦早々眼鏡の弦のネジが取れ、これまでなら眼鏡用のドライバーで何とか修復可能だったのだが、店員に進められてフェラガモのデザインの眼鏡のフレームを買ったのがいけなかった。とにかく部品が華奢で私の肉厚の指では摘みきれない。しかし手持ちの他の眼鏡は度が合わないし、今すぐパソコン作業したい事もあると、いらいらして。

 

 

そういえば、あの「赤貧洗うが如き暮らし」をしていた先生は、眼鏡の弦が折れたのを和紙で補修していたのだと、改めて2006年5月18日付の日経新聞夕刊の切抜きを取り出した。

 

 

この記事は、写真家土門拳を取り上げたもので、写真評論家の筆者は、土門拳の作品から、世界的な細菌学者で赤痢菌の発見者として知られる志賀潔博士の写真を、

【この時の志賀潔博士は「赤貧洗うが如き生活」をしており、自宅は障子紙の代わりに新聞紙を貼っていたという。この写真の眼鏡も弦が折れたので和紙で補修して使っているのであろう。いかにも博士の飾らない人柄をよくあらわしている】

との文章を添えて取り上げている。

 

私はこの写真から立ち昇る突き抜けた大らかさに心が動かされ、大切に切り取ってファイルしていたのだが、一般的な世間の常識からすれば、天下の土門拳の被写体に選ばれた世界的な細菌学者となると、こんなありのままをさらす撮影など家族は反対すると思うが、この写真を通して博士を誇りに思っている家族の思いが私には伝わってくる。

 

それで、私も、少しは志賀博士に近づきたいものと、木綿絲で修復して当座を凌ぐことにした。フェラガモデザインの老眼鏡のフレームも木綿絲で修復すると途端に生活臭が立ち昇って、結局のところ、眼鏡はどれでも同じですなー。

 

 

 

 

 

独り善がり読書(13)2006.7.27「覗き」?「恋の橋渡し」?はたまた「誘惑」?

 私の井原西鶴探索もどんどん深みにはまって、さらに西鶴の生きた時代の風俗を知りたいものと、近くの区立図書館から「原色日本の美術全30巻」の中から、風俗画に関する浮世絵画集の2巻を、あまりの重さに、足をよろよろさせながら借りてきた。

 

 じっくり眺めるのはこれからの楽しみと、先ず、「原色日本の美術 風俗画と浮世絵師」をパラパラめくっていたら、

 

 

艶かしい画風で知られる鈴木春信の作品の中でも、特に艶かしい「かたらい」が目に飛びこんで来た。

縁側で、ちょっと色っぽい年増が、匂い立つ若い男の腕を押さえて、囁きかけている図で、画面からは、ただ事ではない雰囲気が発散している。

 

 

そして、この絵について

「肩を抱き、手首をおさえて少年にささやきかける年かさの女は、障子の影からのぞき見る娘の乳母か侍女というところで、主人と仰ぐ乙女の慕情を代わって届ける恋の仲介者となったものの、なまめかしい年増女の風情を隠し切ることは出来ず、まだ前髪を残す若衆を誘惑しているかのような、あやしいそぶりが窺われる」と、説明している。

 

ところが、この同じ絵が、私が、十年近く手元に置いていた「太陽1995年2月号」に「覗きの悦楽」をテーマにしたページに掲載されている事もあって、

 

 

私には、この絵は、恋の橋渡しの乳母などではなく、前髪の若衆を縁側で積極的に口説いている艶かしい年増と、それを障子の隙間から覗き見して興奮している若い女と映る。

 

うん、どっちに解釈しても、ただならぬ雰囲気が画面から立ち昇るということでは、なかなか、刺激的な絵である。

 

独り善がり読書(12)2006.7.11「ダ・ヴィンチ・コード」ダ・ヴィンチの真意は如何に「最後の晩餐」の解釈

六本木の森アーツセンターギャラリーで「ダ・ヴィンチ・コード展」を見て、いくらか心を残していたのだが、その数日後に近所のbook-offのカウンターで、角川文庫の「ダ・ヴィンチ・コードダン・ブラウン著の上・中・下 各巻400円の値札を見て、思わず手に取り、余りにも面白いので、一気に読んでしまった。

 

 

 そうこうしている内に、2006年7月9日付日経新聞日曜版の「レオナルドの目①劇場空間の創造」と称する記事が、「最後の晩餐」を取り上げていた。

 

 

記事曰く「イエスの口は静かに開く。食卓に崩れ落ちるユダはイエスを直視し、ヨハネの耳元でひそひそ話をするペテロはナイフを握り、今にも襲い掛かりそうだ」と。

さらに、「最後の晩餐」における世界一の専門家といわれる、ミラノ工科大学教授を始めとする、錚々たる人たちの話をドラマチックに組み立てている。

 

 しかし、私が、ここで、話題にしたいのは、「最後の晩餐」を描いた、ダ・ヴィンチの真意をどう解釈するかである。

 

日経新聞の「最後の晩餐」のドラマの解釈は下記のように通念にそったもので、

 「あなた方の内の一人が私を裏切ろうとしている」、死を悟ったイエスの一言で、12人の弟子に動揺が走り、銀貨30枚でイエスを売ったユダは、動揺して机上に崩れそうになり、イエスを凝視する。ペテロはヨハネに顔を近づけ裏切り者が誰かと聞き出そうとしていて、今にも切りかかろうとナイフを構えているから、ユダは気が気ではない、と。

 

しかるに、「ダ・ヴィンチ・コード」では、「最後の晩餐」の解釈を、

 イエスの隣に座っているのは、ヨハネではなく、イエスの伴侶の、しかも、イエスの子供を宿していたマグダラのマリアであり、イエスはこの時、既に教会の未来をマリアに託していた。マグダラのマリアは、これまで、バチカンの陰謀で、賎しい娼婦にされてきたが、実は王家の直系の、身分の高い女性であった。

ペテロはその事で腹を立てていたから、脅かしつけるような様子で、マグダラのマリアに迫り、刃の形をした手を彼女の首に突きつけている。さらに、奇妙な事には、手の数を数えると、誰の手でもない謎の手が短剣を持っている。

 

 

「最後の晩餐」、「ダ・ヴィンチ・コードダン・ブラウン著 角川文庫の中より。

 

 つまり、レオナルド・ダ・ヴィンチはイエスとマリアの結婚とマリアとイエスの間に生まれた子供の存在を知っていたばかりか、バチカンの陰謀から、イエスの子孫を守る為の組織・シオン修道会の責任者でもあり、その組織は、今なお、営々と存在している。

 

 因みにシオン修道会の歴代総長には、レオナルド・ダ・ヴィンチ(1510~1519)の他に、サンドロ・ボッティチェッリ(1483~1510)、アイザック・ニュートン(1691~1717)、ヴィクトル・ユゴー(1844~1885)、クロード・ドビュッシー(1885~1918)、ジャン・コクトー(1918~1963)等、錚々たる人々が名を連ねている。

 

 本来なら、バチカンがこの作品のヒットを恐れるわけですよね。しかし、作者ダン・ブラウンの謝辞を読むと、ルーブル美術館、フランス文化省、プロジェクト・グーテンベルク、フランス国立図書館、ロンドン記録教会、ウェストミンスター寺院記録部を始めとする、錚々たるアカデミックな機関がこの著書のために協力をしている。

 

キリスト教に無縁の私ですら、封印されたもう一つの真実を語る時が来たのかもしれない、と、思わせるだけの説得性のあるストーリーが、「ダ・ヴィンチ・コード」には、スリリングに展開されている。

 

 ともあれ、10年近い労作の末に結実した、この、知的好奇心に満ちた、娯楽としても一級の「ダ・ヴィンチ・コード」に脱帽するしかない。

 

独り善がり読書(11)2006.06.18 日経新聞「経済教室」に見る中国の高貯蓄と米中経済摩擦

2006年6月8日付日本経済新聞の「経済教室」が、中国の経常収支黒字の膨張が、米国との経済摩擦を引き起こしているが、その主な要因に中国の家計貯蓄率の高さが挙げられると指摘している。

 

 

 記事によると、中国の家計貯蓄率(家計貯蓄の可処分所得に占める割合)の推移を見ると、1995年には17%であったものが、2004年には27.9%と、実に可処分所得の4分の一以上を貯蓄に回している事になり、貯蓄率が高いと言われた日本人も仰天するくらいの高い数値である。

 

 一体、何が、このような高貯蓄に中国人を駆り立てるのか。

 

 「経済教室」はその要因として、

① 一人っ子政策による人口構成、

② 銀行や消費者金融などの金融制度の未整備、

③ 年金・医療保険を初めとする社会保障制度の未発達、

を、挙げている。

 

 そして、

①の人口構成については、

老年人口比率(15歳から59歳までの生産年齢人口に対する60歳以上の人口の比率)は、1975年に0.13から2005年には0.16と上昇し、2025年までに0.32まで上昇すると予測されている。

②の銀行や消費者金融などの金融制度の未整備については、

ローンを借りる仕組みがなければ、家や車を買うには、先ず貯蓄をすることから始めなくてはならない。

③の社会保障制度の未整備については、

老後や将来の医療費や災害などの不安に備えて、先ず貯金をと考えるのが普通である。

と、指摘している。

 

2006年当時の中国は、内需拡大よりも輸出依存経済で米国と経済摩擦を起こし、国民は稼いだお金を消費に回すのではなく将来への不安に備えてせっせと貯金する。

 

これは、かつては日本が歩んでいた道だった。中国も大変なのだとつくづく思う。

 

独り善がり読書(10)2006.06.17 アメリカの節約の手引書「66 Ways to Save Money」のアドバイス

アメリカ国民は、先に楽しんで後で支払うというマインドが強いようで、低貯蓄率と借金依存体質が指摘されているが、2006年6月13日の日経新聞朝刊によると、借金依存度が益々深まっているようである。

 

 

特に、石油価格の高騰が、日本と異なり車社会で石油依存度の高いアメリカ家計を直撃しており、それに呼応して、アメリカの消費者団体「コンシューマー・アクション」が、1999年に作成した66項目にわたる節約の手引書「66 Ways to Save Money」サイトへの、消費者のアクセスが急増しているとか。

 

 

この手引書は、

・航空運賃、・新車及び中古車の購入と自動車保険の選択、・生命保険や各種保険の選択、・銀行口座の手数料比較とクレジットカードの使い方、・住宅ローン、・家電製品選びと省エネ、・光熱費と電話代節約、・食品や医薬品の購入、・葬儀及び埋葬費用に至る詳細な節約のポイントが書かれている。

 

文章は簡潔で、例えば

  • 自動車ローンではこうすれば、貴方は契約期間中に数千ドル節約できる
  • 住宅ローンでこうすれば、ローン期間に数万ドル節約できる、
  • 食品購入でこうすれば一年で数百ドル節約できる

と、節約金額が具体的にイメージできる表現をしているのでなかなか説得力がある。

 

さらに、

 ・住宅ローンでは頭金を多くして返済期間を短くする事が一番お金を節約できる、

 ・「生命保険は少なくとも15年は継続する事を前提に選ぶべきで、数年で切り換え

  ると2倍も費用がかかる、

 ・自分の葬儀及び埋葬費用は、事前に葬儀サービス会社数社を比較して一番安いとこ

  ろを選び、最小限必要な準備を自ら記録して、家族に渡しておくと不要な支出を防

  げ、家族も安心できる、

といった、基本的なポイントを手取り足取りアドバイスしている。

 

 これを読んでつくづく感じるのは、節約も寝転んでいては出来ないということ。情報収集、定期的な請求書や口座残高チェックなど、相当マメでないと節約も出来ない事は確かである。