昭和58年の刊行時からこつこつと買い集めた「新潮日本古典集成」シリーズ。これらを、じっくり読み直すことも隠居生活の楽しみのひとつである。「建礼門院右京太夫集」、「和泉式部集」、「法然草」など、幾つか無くしたものもあるが、今のところ25位冊ある。
同じ日本語といっても、源氏物語、枕草子、平家物語、方丈記、梁塵秘抄、風姿花伝、日本永代蔵、と時代によって、また同じ時代でも作者によって、言葉の響きやリズムが異なる。しかし、いずれも日本語の持つ微妙な色あい、深み、美しさを感じさせてくれる事には変わりが無い。
サラリーマン時代は時間に追われて、字面を追うだけに終始して、ゆったりとした言葉のリズムを味わい、情景をじっくり想像し、余韻に浸るといった、本来の楽しさを得ることは難しかった。
細切れではない、一連の時間を持つことが可能になったいまだから読みかえしたい。
新潮日本古典集成シリーズ