矯めつ眇めつ映画プログラム(9)「EYES」

 セックスとバイオレンスの映像が鮮烈な、ファッション・カメラマンのヘルムート・ニュートンの作品が大好きで、あちこちの展示会にまめに足を運んだものだった。


「EYES]は、ニューヨークを舞台に、華やかなファッション・カメラマンと殺人事件を結びつけたミステリー映画で、1978年にアービン・カーシュナーがメガホンを撮った作品である。余談であるが、製作者のジョン・ピータースがバーブラ・ストライサンドの長年の恋人であったことから、主題歌を彼女が唄ったことで話題になった作品でもある。


 物語は、フェイ・ダナウェイ扮するセックスとバイオレンスを売り物にする、人気ファッション・カメラマンが、ある殺人事件をきっかけに、突然、彼女に殺人予知能力が備わり、夢やファインダーを通して殺人の予告を受け、その結果、彼女の出す写真集の作品の構図が、現実の殺人現場の構図と一致するようになる。そして殺人事件の捜査と彼女の護衛を担当することになった若手刑事と彼女との間に恋が生れ、はたまた、犯人は思いもかけぬ人間であった・・・・。


 と、展開するが、安易なミステリー仕立てのストーリーはお粗末なネタに終わり、おまけに、フェイ・ダナウェイの恋の相手役となるトミー・リー・ジョーンズが、小粒でぱっとせず、迫力でフェイ・ダナウェイに圧倒され、映画自体はつまらないものであった。


 しかし、偉大な淀川長治氏の「どんな映画からも学ぶところがある」という教えに従えば、冒頭に揚げたように、大好きなヘルムート・ニュートンの作品をふんだんに見ることが出来たこと、そして、当時も今も変わらない華やかなニューヨークのファッション業界、アート業界の舞台裏をじっくり見ることが出来たことである。


 この映画を観た1978年頃は、何を隠そう、私自身もキャリア・ウーマン意識真っ盛りで、プロの女性カメラマンを演じるフェイ・ダナウェイのファッションや仕事振りに、有能なキャリア・ウーマンのイメージを探っていたのである(写真はプログラムから)。