ボストン到着翌日の午前中に、ローガン国際空港で受け取れなかった預け手荷物が届いたので、一安心した友人と私は、滞在ホテル近くのクインシー・マーケットに足を運んだ。
特に買いたい物があったわけでは無いが、広い敷地に様々な品を扱う店を見るだけでも愉しかったし、お祭りのような賑わいが私達の心を弾ませた。
また、1825年頃の開業時は、卵、チーズ、パンなど食料品を主に取り扱うショッピング・センターとしてスタートしたことも関係しているのか、アメリカン・フードはどれを口にしても美味しかった。
そんな中で、ブランド・ショップの建ち並ぶコーナーで、当時の私が大好きだったコーチの販売店を見つけ、気に入ったバッグを手にしてレジに並び、マスターカードを提示した時「当店ではマスターカードを扱っていません」と拒否されたのには驚いた。
あの頃のクレジットカード業界では、富裕層対象のダイナースは別として、一般向けにはVISAとマスターカードが双璧で、当時の私の給与振込口座のメガバンクは、マスターカードを主として取り扱っていた。
また、当時の日本では、エルメス、シャネル、コーチといった高級ブランド商品には高い、高い、関税が課せられていたので、欧米や、シンガポールに旅行する親戚や友人に、ブランド品の購入を頼む人も珍しくなかった。
そういうわけで、あの時のコーチのバッグは東京で買うよりかなりやすかったのに、買うのを諦めざるを得なかった。
帰国後暫くして、私は新聞でVISAカードがライバルを追い込むために峻烈な戦いを展開していることを知った。