隠居Journal:神保町と私(7)回想(7)2007年8月 炎天下の小旅行 国立近代美術館から神保町へ

日差しのきつい日中は部屋に籠って読書と昼寝、散歩や買物は夕方5時過ぎから、これが2007年の真夏の私の生活のサイクルであった。つまり、晴耕雨読ならぬ暑読暮歩、自宅を中心として避暑地のように暮らせば、それなりに快適に暮らせる事を発見したのである。

 

それでも真夏の太陽を直接に感じたくなるもので、折から国立近代美術館で開催中の「アンリ・ミショー展」を鑑賞して、その後併設のレストラン「クイーンアリス・アクア」でゆったりと午後のお茶を楽しみ、日が翳った頃に神保町で古書街漁りをと考えたのである。

 

東西線竹橋駅から国立近代美術館に向う人たちは、この時期、さすがに多くはなく、後ろ姿も熱さでグッタリして見える。それでも、影法師の長さが、今日が立秋である事を僅かに感じさせる。

 

 

国立近代美術館では、大人気の「アンリ・カルティエ=ブレッソン展」と併行して「アンリ・ミショー展」が開催中であったが、大多数は前者の展示会場に吸い込まれていったが、私は420円を支払って後者の展示会場に向った。

 

ここで作品についは述べないが、筆書きのシンプルなタッチで躍動感を表した作品や、サボテンから抽出される幻覚剤メスカリンを服用して生まれたイメージの「メスカリン素描」の作品群に惹きつけられた。

http://www.momat.go.jp/Honkan/Henri_Michaux/index.html 

 

 

展示を見終えて、「お堀端を眺めながらゆったりとお茶を」の期待は見事に裏切られた。美術館併設の「クイーンアリス・アクア」は、かの有名な石鍋裕シェフがプロデュースにした、お洒落なカフェ・レストランだが、既に店内は、涼しげなドレスを召したご婦人方やカップルに占拠され、数人待ち。炎天下でも、着飾ってお洒落なレストランに繰り出す人たちは沢山いるのだ。

 

 

ならば、コーヒーは神保町の「さぼーる」でと、暑い中をテクテクと神保町に向い、やっと辿り着いた「すずらん通り裏」のドアを開けると、煙むんむんで、禁煙席はありませんとの返事。

 

 

世の大勢が禁煙に傾いているのに、神保町のカフェに「禁煙席」は似合わないとでもいうように、一貫して昔の姿勢を貫いている「さぼーる」。喫煙者の最後のオアシスとして残る積もりか。穴倉のような入り組んだ店内と、醤油色に変色した木のテーブルと椅子の味わいが捨てがたいが、しかし、私には煙は絶えがたい。仕方がないので駿河台下のスタバで一休みする。

 

スタバで一息したあとの古書漁り。今回の目的は、後白河院時代の、つまり平家物語の背景をなす公卿や女官の日記を特集した雑誌「国文学」だが、それらしいバックナンバーを備えた店は見当たらない。

 

そこで、神保町で一番大きな古書店一誠堂書店」で訪ねると、手元にあった「神田古書店地図帖」を渡してくれ、「そういう日本古典に強いのは水道橋に近い日本書房駿河台下の八木書房ですよ」と、親切に教えてくれた。

 

 

頂いた地図帖の表紙に「本のことならなんでも世界一の神田古書店で」と書いているのが力強い。頑張れ、神保町と、応援したくなる。

 

流石に疲れて水道橋近くの日本書院は後日改めるとして、八木書房で目的の雑誌は見つからず、これは年末恒例の京都旅行の際に京都三条河原町古書店に行くしかないと考え直して帰路に向ったが、仏教関係の古書店では、お香の薫りにうっとりして、私の小道中はそれなりに、実りあるものとなった。