橋の絵の前で足踏み 再び氷雨にもめげず

 
1) 橋の絵の前で足踏み

私は勝鬨橋から隅田川を眺めるのが大好きなので風景を描くなら最初は「勝鬨橋」と決めていた。

で、ハガキサイズ、F1サイズ、F4サイズと大きさを変えて鉛筆スケッチを重ねて、いざ色を乗る段階で足踏みすることになった。


ハガキサイズ




F1サイズ


F4サイズ


透明水彩絵具による彩色は「混色」が原則だが、私にはまだその知識とスキルが備わっていなかったのだ。

これまで描いてきた野菜や果物では、絵具を溶かす水の量と重ね塗りの濃淡で立体感を表現してきたが、様々な色でなりたち複雑で微妙な色彩を表現しなければならない風景画ではそうはいかない。で、今、橋の絵の彩色で足踏みをしている。


2) エキストラタレントの風景(完) 再び氷雨にも負けず

午後4時ごろだったか、撮影が終了したので関係者はホールに集まるようにとの構内アナウンスがあった時、「画面に顔の映る」お役で控室に待機したままだった女性と私は顔を見合わせた。

あの時のCM撮影は国技館からの大相撲中継を模したもので、私と同じ事務所の男性が呼出に扮して力士の名を呼び、それに応えて登場した髷とまわしの二人の男性が土俵上で取組を演じ、問わず語りを繰り広げた3人の中高年男性が行司の判定に物言いをつける親方を演じていた。

そして撮影が終盤に差し掛かったころ、カメラが焦点を当てモニター画面に大写しになったのは、華やかな晴着に白狐の襟巻をまとって、花簪を揺らしながら、はじけるような笑顔の2人の若い女性であった。

ホールに着席して撮影協力への労いと悪天候で早めに切り上げたが帰路は気を付けるようにとの主催者からの言葉を背に外に出ると、朝と同様の氷雨と強風の中、衣服の濡れや足元の汚れを物ともせず、見栄えの良い装いに身を包んで晴れやかな表情で帰路に向かう数百人のエキストラタレントたちが目に入った。

この人数で超満員の国技館の観衆を表現するのは撮影スタッフにとって並大抵の事ではなかったと思う。が、それ以上に長い待ち時間を挟んで、何度も何度も移動させられたエキストラタレントたちの肉体的な負担も大変だったであろう。

彼らが念入りの化粧と装いで待機して、それだけの労を費やしても、控室のモニター画面で見た限りでは、カメラは彼らの表面をスーッとすべるだけで、焦点が当たっても精々豆粒くらいのものだったが、それにもかかわらずの晴れやかな顔、顔、顔。

ああ、この人たちは、瞬時であっても、豆粒の大きさであっても自分の顔がテレビに映る事が好きなのだ、その時は映らなくてもテレビに映る機会に居合わせたいのだ、さらには撮影現場に居合わせた、という非日常の体験を家族や仲間と話題にすることが好きなのだと私は納得した。それにちょっとした副収入にもなる。

私自身はこのCM撮影を最後にエキストラタレントから身を引いた。わずか半年であったが普通の生活では体験できない世界を知ることが出来て有意義だったが、いかんせん、早朝と深夜に弱く、おめかしが面倒で、何より待つことの嫌いな私には向かなかったのだ。

さらには、会社員時代のある時期、毎週末映画館に足を運んで買い集めたプログラムが300冊超。それを元にに映画プログラムをテーマにブログのシリーズを開始する準備が整ったからでもある。
題して「矯めつ眇めつ映画プログラム」(http://d.hatena.ne.jp/K-sako/20071128)。