りんご描分(完)、役者いろいろ

 
1) りんご描分(完)

(1) ふじ

何と言ってもりんごは「ふじ」。描いたのは青森県産の「ふじ」です。甘味と酸味がしっかりミックスして「りんごの王者」の風格があります。



(2) シナノゴールド

りんご描分のトリは長野県産の「シナノゴールド」です。掌にとると見た目よりもずっしりとした質感があり、噛むと口中に濃厚な果汁が広がります。
ゴールドに相応しく「黄金の光を放ちながら2015年に向かって突進する姿」に見立てて描いてみました。



2)エキストラタレントの風景(3)役者いろいろ

畳敷きの広い控室で、火鉢の前に陣取った3人の中高年男性の会話は、初めのうちはエキストラタレント・プロダクションの品定めで盛りあがっていたが、いつの間にか彼らの問わず語りに変わっていた。

ドーラン焼と思われる赤黒い顔の男性は、時代劇全盛時代の京都撮影所で今は亡き大物俳優の人気シリーズの脇役を勤めていた頃、打ち上げの度に大物俳優がスタッフや彼等を引き連れて祇園に繰り出して豪遊した話を懐かしげに語ってくれた。その大物俳優がどんなに気前が良かったかも。

また、50代半ばと思われるのに演劇青年の面影を残す男性は新劇出身の俳優で、テレビ時代の到来によって新劇の観客が激減して、演技力をつけたにも拘わらず自分が主役を演じる機会を失ない、生活のためにテレビ出演を余儀なくされたものの、これまで身に着けた演劇論や演技力が全く通用しないばかりか、演技は二の次の若手人気スターの引き立て役であることの苦い思いを吐露していた。

そういえば、新劇が盛んだった頃、若かった私と友人は民芸の会員として足繁く劇場に通い、滝沢修の「ゴッホ」や「セールスマンの死」、杉村春子主演ではないが「欲望という電車」などに感動し、インテリ青年だった米倉斉加年に胸をときめかせ、「おはなはん」で人気者になった樫山文江の可憐さに頬をゆるめ、額の広い知性的な美人の奈良岡朋子に憧れたものだったが、確かにあの頃の新劇俳優は脇役も含めて輝いていた。

さらに、くたびれたジャンバーを身に着けた男性は、映画の全盛期には大部屋俳優として時代劇に出演していたが、時代劇が斜陽となった今は人気歌手の歌謡ショーで脇役を勤め、地方公演の折にはスター歌手は一流ホテルに宿泊するが自分たちはビジネスホテルだと切ない裏話を披露していた。