鉛筆の描写力

4月からデッサン教室に通っている。体験レッスンで長く長く芯を尖らせた幾本もの鉛筆を見て驚き、レッスン初日に「画帳に8つの升目を作って、それを一本の鉛筆で8段階のグラディションで塗り分けるように」と課題を出されて唖然とした私であった。

それでも木曜日の午後は欠かさずレッスンに通い陶器の果物や古びた登山靴などを描いていたのだが、あるとき先生から「次はこれを描いてください」と渡されたのが何とも不気味な剥製のカラス。


「こんな黒い鳥を鉛筆でどうやって描くのよ」との悪態は一応胸に収めて剥製カラスとの付き合いが始まった。当初はひたすらカラスと睨めっこをしているだけだったが。

 何か手本でもと最寄りの図書館から参考書をいくつか借出して、自宅で鳥のデッサンを真似ているうちに手が動くようになり、そして、初めに画帳から姿を表したのはおずおずとした表情の鳥らしきものだった。

 その後、私の描くカラスの眼に生気が表れ、嘴に鋭さが加わったころから、アトリエ仲間のポジティブな感想や励ましの言葉に乗せられ、かつ忍耐強い先生の指導もあって、みるみる攻撃性を帯びたカラスに仕上がっていった。


描き上げて先ず感じたのは、4H〜6Bの鉛筆でこれほどの描写力を発揮できるとは、との少なからぬ驚きであった。