1) スケッチブックから〜淡彩画の試み
透明水彩画は色彩の透明感が命であるから色の塗り直しが利かず、色を塗り重ねる時は淡い色から重ねるという制約があり、さらに白の絵の具は不透明だから殆ど出番はなく、明るさを強調する時は紙の地を活かして塗り残すという鉄則がある。
そんな透明水彩画の中でも淡彩画を描く場合は色の塗り重ねは精々2回位に留めるというなかなか厳しい制約があるのだが、なぜか私は以前から淡彩画を描きたいと思っていたのでこの機会に試みることにした。
国産小粒キーウィフルーツを描いたこの作品は、デッサンの感覚で明暗を強調するために濃い色の上に薄い色を塗り、さらに明るさを強調するために白の混色を塗ったために濁ってきたない色になった失敗作。
ブロッコリーを描く。透明水彩絵の具の透明感を認識する事から始める。
春の象徴菜の花を描く。「色を置く」「色を塗る」の区別がつかない。
鹿児島産のタンカンを描く。球体の立体感を表現するために色の塗り重ねで明暗を強調する。
私が初めて目にするアイスプラント。葉と茎の上を小さなキラキラした透明の粒が覆い、口にするとその粒々がシャリ感を伴ってえもいわれぬ味わいをもたらすが、透明ゆえにその存在を写真で捉えることも絵に表現することも難しい。
2) 閑話 〜 女王陛下で稼ぐイギリス
(1) クィーンエリザベス号
3月17日、突然海を見たくなってみなと未来に足を運ぶと、赤レンガ倉庫街のこちら側と大桟橋の向こう側に鈴なりの観衆を従えた豪華客船Queen Elizabeth が白い貴婦人さながらにエレガントな雄姿で周囲を睥睨していた。
(2014年3月17日14時3分撮影)
報道によるとQueen Elizabethはベイブリッジを潜り抜けるために干潮時の限られた時間を縫って寄港したのだが、深夜にもかかわらず大桟橋には2000人の観衆が出迎えたという。世界にはQueen Elizabethを凌駕する豪華客船は幾つもあるが、果たして他の豪華客船であったらこれほどの熱狂で迎えられたであろうか。
(2) 女王陛下の007
「女王陛下の007」(原題:On Her Majesty’s Secret Service)はお馴染みイアン・フレミングの007シリーズ第10作目に当るが、残念ながら映画ではジェームズ・ボンド役はショーン・コネリーではなく二代目によって1969年12月に日本でも公開された。
因みにこの作品の前には「007は二度死ぬ」、後には「007ダイヤモンドは永遠に」と続きいいずれも大ヒットとなったが、私は1作も見ていない。それでも「Diamonds are forever,forever,forever」と熱唱したシャーリーバッシーのサントラ盤は忘れられない。
(3) HER MAJESUTY’S THEATER
その名もズバリ「女王陛下の劇場」、ロンドンのウエストエンドにあるこの劇場は、1991年5月と2001年5月にミュージカル「オペラ座の怪人」を見た私にとって忘れがたい存在となった。
(オペラ座の怪人、2001年5月公演のプログラム)
1991年の時はチケットが完売で、ダフ屋に2倍の料金を支払って一番安い(多分4階の狭くて堅い木製椅子)席で観たが、余りにも素晴らしくてダフ屋にぼられた事を惜しいと思わなかったばかりか、願わくばもう1度この劇場で観たいと思ったものだ。
そして10年後に念願が叶ったのはロンドンに単身赴任をしていた友人の夫の手を煩わせて一階のオーケストラ席の真上というこれ以上は望めない席から観劇して、友人夫妻共々、ドラマに、音楽に、衣装に酔いしれたのであった。
私を虜にしたこの「女王陛下の劇場」は、今なお「オペラ座の怪人」の超々ロングランで世界中からファンをかき集めている。
(http://www.reallyusefultheatres.co.uk/our-theatres/her-majestys)
たそがれて久しい大英帝国だが女王陛下の栄光は侮りがたいとつくづく感じさせられる。