古書から滑り落ちた時代の断片

私の古書街漁りは、OLとして働き始めた大手町の職場からゴトゴト都電に揺られて神保町入りをした頃から始まっている。都電が消えてからはトコトコと徒歩で通い、60歳の定年退職後は都営地下鉄で月に一度は神保町詣でをしている。

 捜し求めた獲物を手にして近くのカフェで気もそぞろにページを捲るのが古書漁りの楽しみだが、時には思いもかけぬ物がページの合間から滑り落ちてくる事もある。

で、その思いもかけぬ物をお見せすると、

(1)抽選日が昭和38年10月26日の東京都宝くじ


     


  あの頃の宝くじの値段は100円であったのだ。鮮やかな5輪マークが翌年に東京オリンピックを控えていた当時を思い起こさせる。受託は今はなき日本勧業銀行


(2)年7分2厘5毛の公社債投信コース


    

 これは、最近友人と久し振りに神田で飲むことになり、それならばと神保町に出張って廃刊になった『国文学』のバックナンバーを搔き分けて見つけた目当ての本を、スタバで読み始めた時にはらりと落ちた古めかしい名詞である。 先ず、<年7分2厘5毛>に目が釘付け。
今は無き公社債投信だが、一年で7.25%も利息がつく時代があったのだ。年7%だと複利でゆけば7年で預金額が倍になる。 そういえば若かりし頃の友人が親から譲られた家を2千万円で売却して、売却金を定期預金にすれば年6%の金利で家賃が賄えるから元金は減らない、などと言っていたが、今頃どうしているかな。確かに元金2千万円で年利6%なら120万円だ。


(3)純喫茶 れだ「LEDA」 大森店開店記念 30円サーヴィス券

  
    

 「LEDA」、なんとも蠱惑な店名ではないか。ギリシャ神話で白鳥の姿になったゼウスと交わったあの女性の名前なのだから。大森店開店記念サーヴィス券だが本店は銀座西1丁目並木通り西側裏小路になっている。
 「HiFi音楽&TV」が売り物の「純喫茶」というのが何故か昭和の空気を感じさせる。30円のサーヴィス券が大いなる効果を発揮した時代だったのだ。

試しに「れだ 銀座並木通り」でぐぐったがそれらしきものを見つけることは出来なかった。