後白河院と遊女(番外編)私の今様10選 博打打ちの母 など

後白河院と遊女のシリーズを終えるに当って、「梁塵秘抄」から今様を10首選んでみました(数字は通し番号)。

365 
わが子は二十(はたち)になりぬらん 
博打(ばくち)してこそ歩(あり)くなれ
国々の博党(ばくたう)に、さすがに子なれば憎かなし
負(ま)かいたまうな 王子の住吉 西宮

“ヤクザな息子ほど可愛いものでござんす”  

394 
女の盛りなるは 十四五六歳 二十三四とか 
三十四五にし なりぬれば 
紅葉(もみじ)の下葉(したは)に異ならず

“それじゃあ、アラ還は?”

339 
われを頼めて来ぬ男 角三つ生(お)ひたる鬼になれ 
さて 人に疎まれよ 
霜 雪 霰(あられ)降る水田(みづた)の鳥となれ 
さて 足冷たかれ 池の浮草となりねかし

“これぞ、女心”

408 
舞へ舞へ 蝸牛(かたつぶり) 舞はぬものならば
馬の子や牛の子に蹴(くゑ)させてん 踏み破(わ)らせてん 
まことに美しく舞うたらば 華(はな)の園まで遊ばせん

410 
頭(こうべ)に遊ぶは頭虱(かしらじらみ)
項(うなじ)の窪(くぼ)をぞ極(き)めて食ふ
櫛の歯より天降(あまくだ)る 
麻小笱(をごけ)の蓋にて命(めい)終わる

“痒くなってきた”

460 
恋ひ恋ひて たまさかに逢ひて寝たる夜(よ)の夢は いかが見る
さしさし きしと抱くとこそ見れ

“何ともあけすけな!”

368 
このごろ京(みやこ)に流行るもの 
肩当 腰当 烏帽子止(えぼしとどめ)
衿の立つ型 錆烏帽子※ 
布打ちの下の袴 四幅(よの)の指貫(さしぬき)

※ 錆烏帽子:デザインとして皺をつけた烏帽子

“私にも覚えがあります、肩パット、立衿、帽子ピン”

258 
熊野へ参らむと思へども 
徒歩(かち)より参れば道遠し すぐれて山きびし
馬にて参れば苦行ならず 
空より参らむ 羽賜(た)べ 若王子(にゃくわうじ)

“鳥のように羽ばたく方が馬に乗るよりは苦行度がやや高いってこと”

304 
峰の花折る小大徳(こだいとく※) 
面立(つらだち)よければ裳 袈裟よし
まして高座に登りては 法(のり)の声こそ尊(たふと)けれ

※ 小大徳は若い僧侶

“イケメンの若僧侶は女性信者獲得の切札です”

235 
われらは何して老いぬらん 思へばいとこそあはれなれ 
今は西方(さいほう)極楽の 弥陀の誓ひを念ずべし

“遊女が海賊に襲われて重傷を負い、臨終にこの歌を謡って極楽往生を遂げた、と、
伝えられる歌、しみじみと思い起こしたい”