それぞれの都市にはシンボルとも言うべき川がある。そして、川辺の散策はその都市をじっくり味わう上で欠かせないが、その川でのクルージングはそれとはまた違った趣がある。
さて、パリのシンボルと言えばセーヌ川。友人と私は晴れた日の午後にエッフェル塔近くの乗船場からシテ島、サンルイ島を回って往復する1時間コースの遊覧船のデッキから身を乗り出した。
先ずスタート地点でエッフェル塔を間近にじっくり眺め、それから、アン・ヴァリッド、オルセー美術館、ノートルダム大聖堂、鴨料理で超有名なトゥール・ダルジャン、
パリ市庁、マリー・アントワネットが幽閉されたコンシェルジュリー、ルーブル美術館、コンコルド広場、グラン・パレ、シャイヨー宮、次々に魅力的な観光スポットが姿を現すのでひたすら目を見張るばかりだった。
わずか1時間で、これほど見所の多い充実したクルージングは世界でも希ではないか。
翻って、東京在住の私にとっての川といえば隅田川。その隅田川で今でも印象に残っているのは、私が30代の半ば頃に職場で催した、浅草の近くの吾妻橋の船宿から江戸情緒溢れる畳敷きの屋形船をチャーターした往復2時間の納涼宴会だった。
開け放った障子窓から、暮れゆく川岸の風景を眺めながらの往路では、私たちは、天ぷら、寿司、刺身、ビール、日本酒を楽しみながら、賑々しく歓談した。
そして復路は、全員参加のカラオケ大会。一人一人が、同僚の手拍子を背に、得意の持ち歌を、思いっきり大きな声で歌ったのだった。中には自ら振り付けした踊りと共に気持ちよさげに自己陶酔する輩もいたが。

(隅田川暮色)

(隅田川の遊覧船)