独り善がり読書(3)近所のBOOK-OFFで一冊105円の至福

2005年頃から、私は近所散歩のついでにBOOK-OFFに立ち寄るのが習慣になったが、その頃はスーパで買い物をすると同じ感覚で、店備え付けの買い物籠を抱えて、ポンポン本を買い込んでいる人が目に付いた。これは、BOOK-OFFが105円コーナーを設けて以来である。

 

ところで、定年退職前の、会社員時代の私の書籍代は、週刊誌の「日経ビジネス」、英語学習と情報収集のための「ニューズウィーク・アジア版」を含めて、月に1万5千円をゆうに超え、賞与の月は3万円を超えることもしばしばあった。

 

特にビジネス書籍は、これはと思うものは、金に糸目をつけないくらいに、発売と同時に買い込んだものだった。まあ、それ位勉強をしないと、変化の激しいビジネス環境で、組織に埋没することなく、自分の存在感を保って長く働くことは出来なかったので、私自身はこれらの書籍代は働き続けるためのコストと位置づけていた。

 

そして、定年後は、すっきりと暮らすことにして、大半の書籍は資源ごみと古本屋で処分し、「これからは、図書館があるさ」という気分に切り替えた。

 

それでも、図書館から本を借りるのは、返却や貸し出しが案外に面倒で、特にじっくり読みたい本は3週間の貸し出し期間では落ち着いて読めない。

 

特に定年を機に、これまで走り読みしてきたミステリーを、じっくり読み直そうと計画を立てていた私にとっては、公立図書館の活用はある面で限界もあった。

 

取り分け、優れたミステリーには謎解きだけでなく、事件の背景となる時代や都市の描写、登場人物の性格、属する階級に伴う生活スタイルや嗜好、そして薀蓄などの細部の表現をじっくり味わいたいと思わせる魅力がある。

 

そんな中でも私の場合は、「メグレ警視」と「ポアロ」は別格にして、「ロンドン警視庁ジュリー警視」、「オックスフォード警察モース主任警部」、「ストックホルム警察本部マルティン・ベック主任警視」シリーズをじっくり読み直したかった。どうやら私は警官小説が好きなようだ。組織の中で長く働くうちに「組織と人間の葛藤」「組織の中の人間と人間のぶつかりあい」に共感を抱くようになったからか。

 

 

そんなわけで、私は、BOOK-OFFの105円コーナーから、上記のシリーズを始め、古典的なミステリー作品のを買い始めた。ページや装丁が傷んだものから105円のコーナーに移されるのだが、人気作品は直ぐに売れる。まるで掘り出し物を探すようにマメに書店に足を運ばなければならない。

 

印税を主たる収入源とする作家と出版社には申し訳ないが、本好きにはとても有難い時代だと105円コーナーに感謝している。