3原色と水彩絵具、東山魁夷の絵具箱

 
1) 水彩絵具学(1)3原色と水彩絵具

どんな色を混ぜても作ることのできない赤・黄・青を3原色といい、この3原色があれば色を無限に作ることが出来るという「3原色理論」は学校で習った。

   
  

さらに、赤と黄を混ぜると橙、赤と青を混ぜると紫、黄と青を混ぜると緑になり、赤・黄・青の3原色を混ぜると黒になるというのも学校で習った。

しかし、これらはあくまでも理論上の事で、水彩絵具にはこの3原色に該当する純粋な赤・青・黄がない。それだけでなく殆どの絵具には赤・黄・青のうち2色あるいは3色が様々な割合で含まれている。

そこで、いざ水彩絵具で彩色する段になって足踏みしている私としては、
http://d.hatena.ne.jp/K-sako+kankyo/20150120
少なくとも自分のイメージに合った色で絵を描くためにも、ここで水彩絵具のイロハから学習するしかないと、鈴木輝實氏の「透明水彩混色教室すぐに役立つ色づくりの実技」(グラフィック社)と「水彩画を極める混色テクニック」(Gakken)を手引書にして学習することにした。

2) 東山魁夷の絵具箱

まだ松の内といえる肌寒い昼下がりに、日本橋三越で催された「東山魁夷展」に足を運んだ。ベルリン大学留学時代から晩年にいたる作品を一堂に会した集大成ともいえる展示は、青と緑を主調とした画伯の静謐な画面に惹きつけられていた私にとっては必見で、何度も会場内を往復して心行くまで作品を堪能して充実した気分で会場を後にすることが出来た。

作品の中でも特に色彩を重視する私としては、アトリエ再現コーナーに据えられた画伯の絵具箱に大いなる関心が向かい、あの独特の色調の鍵となる絵具箱の中身をじっくり見たいと後日再び足を運んだのである。

今、その時のメモを元に画伯の絵具箱について述べると、それは8段の抽斗で、一段の抽斗にはガラスケースに入った絵具40本がきっちり並び、ちょうど小振りな箪笥に相当する大きさであったが、最上段はガラス張りで上記の写真のように絵具が並んでいた。


それぞれの抽斗は中の絵具が見えるように引き出され、1段と2段には青系、3段には青系と緑系、4段と5段には緑系、6段には砂・灰・薄紫などの中間色、7段には茶系、8段には赤系の絵具が隈なく詰められていた。

そして傍らのガラスケースには「天然岩群緑」「天然群青」「水群緑」「碧群」「水色白群」「天然緑青」などのラベルを張ったガラス容器入りの鮮やかで深みのある絵具が展示され、私は初めて日本画に用いられる岩絵具の奥行きの深さを知ったのだった。