彼方の記憶(15)リーマンショック前の資産運用セミナー風景

2004年に定年退職した後に幾つかの資産運用セミナーに足を運んだ。

通常は当時私が口座を持っていた外資系銀行の主催するセミナーだったが、海外の投資信託会社のアナリストを招いて、投資対象国の経済情勢と、これから投資を始めようとする個々人のリスク許容度に応じた投資商品の説明を聴いた。

時には東京証券取引所が個人株主の拡大を狙って催すセミナーに参加することもあった。これは、サラリーマンやOLを対象に、初心者向け、中級者向けといった経験や知識のレベルに合わせて催す場合が多かった。

それらのセミナーに参加して見えたことは、海外の投資信託がテーマの場合、定年を間直に控えた団塊の世代の参加が多く、大半が夫婦連れであった。そして、彼らの表情から、年金支給開始期の繰上げに伴い、定年退職後の生活を安定させるために、退職金を少しでも有利に運用したいと言う意向が読み取れた。

また、証券会社の主催する株式投資セミナーや債券投資セミナーでは、年代を問わず働く女性の参加が目立った。将来の年金制度への不安、仕事の先行きの不安などから、金利の低い銀行預金ではなく、株や債権への投資という積極的にお金を運用して老後の経済基盤を安定させたいという意識が芽生えているようだった。この傾向は少し前までは見られなかったものだ。

目先の変わったものとしては、ドイツ商工会議所と東京証券取引所が共催した、ドイツ企業の日本の個人株主獲得を目的とした説明会があった。この時は、ドイツ銀行、フォルックスワーゲン、シーメンスダイムラーベンツといった錚々たる企業の幹部が、それぞれの成長目標を掲げた方針を説明して、ドイツ企業がポーランドハンガリーチェコといった、東欧進出を焦点においている事が分かった。余録としてドイツなまり英語のヒアリングの練習にもなった。

写真はその会場で参加者に配られた記念品 上:ドイツ銀行提供の(小銭入れ・メモパッド・西洋風仁丹)の三点セット、 下:フォルックスワーゲン社提供のゴルフボール


 

あれから3〜4年後にリーマンショックが起こり、世界の金融機関の大半は沈没し、投資家どころか国家も企業も国民も大きな傷を負った。

ご多分に漏れず大火傷をした私は、よくわかっていない国・企業・商品を対象とした金融商品に虎の子を投入する事の怖さを知り、今は手数料の安いネット証券でNISAの範囲で販売手数料ゼロの金融商品を選ぶ臆病投資家に徹している。

リーマンショックから得た私の教訓は、目先の儲けに振り回されずに、こつこと貯めたお金を定期預金に預けた人が一番損をしなかったということ。大きな儲けを狙うより元金を減らさないことが超低金利の時代こそ賢い資産運用なのだ。