彼方の記憶(1)ヒラリー・クリントンの置土産

アメリカが本拠地の書籍割引販売を売り物にした「Book-of-the-Month-Club」を活用していた事がある。2ヶ月に1度の頻度でカタログが届き、その中から気に入った本を選び、申込書を航空便で送るとクレジットカードで決済し、注文した本は太平洋を波に揺られて船便で届くという、まことに、のどかな時代の話である。

このクラブは、販売促進策として、例えば、ハードカバーを三冊購入した実績があれば、数ドル支払うだけで、比較的高価な装丁の美術書等が指定のリストから選べるという顧客向けの特典を設けていた。

「The White House Collection of American Crafts」は、その特典で入手した一冊で、ホワイトハウスのあちこちの部屋に飾られていた作品を元に、当時の女主人であったヒラリー・クリントンが編集したもので、作品の中に志野茶碗が見られるが、殆どは1990年代前半のアメリカ人の作品から選ばれ、ガラス、金属、陶磁器、繊維、木、と、材質別に美しく配置されている。




    
この美術書は、ヒラリー・クリントンの好みが反映されていると言えなくも無いが、アメリカのある時代の現代美術を知る上でも格好の書である。

さて、2017年1月に新たなホワイトハウスの女主人となる新大統領夫人はどのような置土産を残すのであろうか?