彼方の記憶(6)『ルービン回顧録』

2005年11月頃に「ルービン回顧録」を読んだのだが、著者のロバート・ルービン氏は、ウオールストリートのトップ企業ゴールドマン・サックスの共同会長から、クリントン政権発足に伴い新設された国家経済会議の委員長に就任し、その後1995年〜1999年に亘って財務省長官を務め、メキシコ危機、タイ、韓国で起きたアジア通貨危機、そしてロシア危機と幾多の世界経済危機を乗り切って、「アメリカ始まって以来の名財務長官」と評された。

アメリカでは、大企業の経営者が政権の閣僚や大使に就任することは珍しくはないが、その多くは共和党政権に参加する。しかし、ルービン氏は、政府が継続的に貧困対策を重視し、国家予算を割くことは、アメリカ経済と社会の安定に不可欠であるという固い信念に基づいて、民主党への支援活動を一貫して続けていた。

ルービン氏は財務長官を退いた後にシティグループの経営に携わったのだが、サブプライムローンに端を発した2008年のバブル崩壊シティグループも大きく関わったことから経営責任を問われて表舞台から姿を消した。

まことに人の評価というものは測りがたい。