痒い芋

長芋も大和芋も「とろろ芋」と呼ばれる。私は「とろろ芋」は嫌いではないのだが、下拵えをする時の痒さに耐えきれず、洗う時も、包丁で切る時も両手にポリ袋をかぶせるので、ていねいで綺麗な仕上がりは到底望めない。

何と言っても、とろろ芋の醍醐味は「とろろ汁」に尽きると思っているが、とてもそこまで手が回らないので、私の定番は1センチくらいの輪切りにしてオリーブ油で両面を焼くか、小さめの賽の目切りにしてもみ海苔または鰹節と醤油をかけるか、時に根菜類との炊き合せに落ち着く。

飲み歩いていた若い頃は、飲み屋のメニューに「とろろ芋の磯部揚」が載っているとよく注文したものだった。あるとき、何かの集まりの流れで男友達と池袋の飲み屋に入り「とろろ芋の磯部揚」を注文したところ、「今夜は精が出ますよ」と板さんに片目をつぶられて赤面したことがある。