隠居のHarvard Summer School 留学記(22)

閑話休題(3)教授のレクチャーで印象に残った事

毎週金曜の午後は、全レベルの英語研修学生が一同に集合して、ハーバードの教授から専門分野のレクチャーを受けるPlenary Lecture Seriesの授業が組まれている。

今振り返って思い出せるテーマは、「グアテマラのマヤ文化」「海洋の微生物」「Why We Run?」「ニコラス・コペルニクス」等があるが、その中で特に強く印象に残ったテーマを二つ挙げてみたい。

1.「The New Politics Higher Education」

このレクチャーでは、アメリカは民主・共和の二大政党のどちらが政権を担っているかで高等教育の政策が大きく変わるので継続性を保ちにくい事と、財政上の問題から返済義務のない奨学金がどんどん削減されて、代わりに利子つき学生ローンの比率が増えたことで教育の機会均等が崩れ、大学側にとっても経済的に苦境にあるが優秀な学生を獲得しにくくなってきている事を指摘していた。

そして、私自身は、アメリカが国立大学を持っていない事と、日本の文部省のような連邦政府として教育を統括・管理する組織を持っていない事をこの時初めて知った。教育は州政府に任され、連邦政府は教育に関する情報提供をするだけなのだ。

そういえば、ハーバードやプリンストンなどアイビーリーグやMIT等の超一流大学は私立であり、著名なUCLA(カリフォルニア大学ロスアンゼルス校)がロスアンゼルス州立大学であるように多くは州立大学やコミュニティカレッジなのである。

レクチャー後に提出したレポート「DIRECTED LISTENING」

2.「Due Process of Law and Captured Enemy Combatants

上のタイトルを私の拙い語学力で訳すと「敵軍の戦闘捕虜の法的措置)」ということになるか。このテーマで国際法の権威からレクチャーを受けたのだが、これがキリスト教国家とジュネーブ協定が絡み、私にとっては内容を理解したとはとても言い難い。

レクチャー前の講演テキストをベースにしたグループ討議では、ヨーロッパを始め南米の学生たちは初めから極めてスムーズに活発な議論を展開していたが、憲法で戦争を放棄している国に住む日本人の私にとっては「どこの世界の話」って感じだった。考えてみればヨーロッパや南米、そして中東やアジアの中には絶えず戦争と隣り合わせの国があり、レクチャーの後は次々に学生から熱心な質問と積極的な意見が続き、私は平和ボケを痛感した。

レクチャー後に提出したレポート「DIRECTED LISTENING」


    
このレポートの最後の「もっと知りたい事」の項に、「テロリストの捕虜をジュネーブ協定ではどう扱うのか」と書いて提出したところ、Ma先生から「良い質問だ、教授に質問すべきだった」とのコメントを戴いた。

ところで、このPlenary Lecture Seriesは、プロフェッサーが約1時間スピーチをした後、質問したい人は挙手をして左右のマイクに並べば誰でも質問し教授から答えを得る事が出来る。多い時は20人から30人の質問を、即興で、水も飲まずに対応するのだから、やはりハーバードの教授は凄いと感心する。